化成皮膜処理について

今回は、化成皮膜処理について説明したいと思います。
生成する皮膜は用途により、さまざまな種類がありますが、当社は塗装下地処理の一貫として行っています。
当然のことながら、防錆効果、塗料との付着性向上が処理の目的になります。
先ずは、専門書から引用し、化成皮膜処理について記述します。
「化成皮膜処理とは、金属表面を化学的に処理して、その表面に不溶性化合物の被覆を生成させる方法である。JIS規格では、化学的または電気化学的な処理によって金属表面に安定な化合物を生成させることであり、リン酸塩処理、黒染め処理、クロメート処理などがあると規定されている。また、一般に化成被膜処理方法は金属表面に適度に抑制した腐食反応を営ませ、その腐食生成物を被覆に利用する構造に基づいている。すなわち、化成被膜処理とは、ある金属をある腐食液のある条件下で化学反応させ、濃度分極、陰陽分極などによって、その金属の表面に固着性のある難溶性腐食生成物をつくることである。そして、得られた皮膜が、いかに水、その他腐蝕環境から下地の金属を保護するか、また、劣化を防ぎうるかなどが、その皮膜の塗装下地としての価値判断の基準となるわけである。したがって、塗装下地としての化成皮膜には次のような特性が要求される。

 

  1. 腐食性の雰囲気から素地金属を保護する力が強いこと。
  2. 素地金属との付着力が強いこと。
  3. 塗膜への付着力が強いこと。
  4. 塗装焼付温度程度の耐熱性を有すること。

・・・・後略・・・・・・・」
塗装下地用として、皮膜に対しどんな特性が求められるかについて4つ上げています。
処理方法としては、一般的にはスプレー、ディッピングの二通りがあり、当社は後者の方法を取っています。スプレーは吊るして行いますが、設置スペースが大きくなります。限られたスペースと多品種の扱いを考慮してディッピング方法になりました。
工程としては

予備脱脂

本脱脂

水洗

水洗

 

中和 エッチング

水洗

水洗

表面調整

水洗

水洗

 

化成皮膜処理 ノンクロム型 下の写真 3価クロメート

シャワー水洗

水洗

 

 

純水水洗

純水水洗

水切り乾燥

の順序で構成されています。

作業風景

前処理工程の詳細は※こちらを参照してください。

※現在はMg化成皮膜処理は行っていません。
次に、
塗装下地用以外、用途別にどんな化成皮膜処理剤が使われ化成皮膜が生成されているか記述します。
 塑性加工用化成処理剤
「塑性加工用化成処理剤による処理は、リン酸塩被膜の最も新しい使用面での一つであり、リン酸塩被膜の可塑性を利用した着目すべき傾向である。すなわち、これ皮膜自体の潤滑的能力と鋼管、銅線などの冷牽(れいけん)加工作業時における他の潤滑剤の保持能力とを利用する方法。・・・・・・略・・・ 」
簡潔にいえば、変形加工する際、加工しやすくするために使用される物なのでしょう。
加工例として、伸線、伸管、押し出し、深絞り、など種々の冷間加工に使用されている。
塗装下地にはリン酸鉄、リン酸亜鉛が使われる。
他は詳細を省き、列挙します。
防錆用化成処理剤
耐磨耗用化成処理剤
絶縁用化成処理剤
プラスチック・ラミネート用化成処理剤
などがあります。
「今日の工業的リン酸塩処理の基礎技術は、1906年T,W,Coslettによってもたらされ、日本では昭和3年(1928年)ころ、よりリン酸塩処理の企業化がなされ、当時は兵器の防食処理が主たる用途であった。・・・・・」
表面技術便覧より
当社は、塗装下地用に用いているので、上記のものについてはあまり馴染みがありません。
しかしここ数年、塗装はせず金属防錆だけを依頼される仕事が増えてきました。主にMgダイカスト製品です。
ノンクロムタイプでリン酸マンガン系の処理剤で行なっています。
他に取引先が、顧客の要請により塗装下地用に黒染めをした亜鉛ダイカストの塗装もあります。
黒染めは表面技術便覧よれば、次のように説明しています。
「黒色酸化処理:1915年鉄製品を濃厚アルカリ水溶液に浸漬して、沸点に加熱して黒色着色(黒染め)することが、独のB,グエリエによって発明された。黒色酸化法には、このアルカリ酸化皮膜法のほか、溶融塩酸化皮膜もある。・・・・・
・・・中略・・・アルカリ酸化皮膜法は当初銃身、剣鞘の防錆のため、ドイツより導入され日本陸軍の造兵厰で実施され始めた。この被膜は地金に密着し、耐熱、耐磨耗、耐食性もあり、摺動部品などに利用される。・・・・・」
クロメート(6価)処理に触れたいと思います。この処理は亜鉛、アルミ、鉄、ステンレスに利用されていましたが、6価クロムを使用するので、環境、公害問題などから使われなくなりました。それに代わって普及し始めたのが3価クロムのクロメート処理です。
しかし、3価クロムは経時により6価クロムが検出されるが、許容濃度が※RHOSなどの規定にも超えないため使われるようになった様です。公害、環境を考慮したノンクロムタイプのものより防錆力が優れていたことが普及に拍車をかけたのでしょう。ここ5,6年前からだと思います。
(※RHOS指令とは、欧州で発令された規則で「電気・電子部品に含まれる特定有害物質の使用制限」の事を言います。)
実際、ここ数年当社でも、化成処理は3価と指定してくるケースが増えています。
塗装仕様においては、以前お知らせで発表しましたが、1000時間連続塩水噴霧では3価クロメートより、塗膜性能は防錆に関してよいのですが、防錆に関し皮膜単体で用いる場合、ノンクロムタイプは比べると劣る面があります。
でも、当社は長年ノンクロムタイプの化成被膜処理をしていますが、なんら支障はありません。
しかし、製品の用途を加味して、付着性、防錆のバランスを計った結果、3価クロメートを選定するのでしょう。
現在は、要請に応え、外注して行っています。
2009年7月内製化しています。

※ 付記
3価は経時で6価が出てくる事を考慮して、ノンクロムタイプを選ぶ取引先もあります。
以前は、塗装仕様は当社で決めるケースがほとんどでしたが、近年、発注側で決めるケースが増えています。その変化については、このブログ「色見本限度後日談」で触れています。
付着性に関しては、当社がおこなうノンクロムタイプの皮膜のほうが勝っているようです。
HPの「お知らせ」でご確認ください。
どちらにしろ、錆の発生は完成品となった後は市場クレームになりかねません。
古来より、錆が出ないように金属に関しては工夫がされていましたが、和釘の錆び止めに漆が使われたようです。
先人の知恵を紹介します。
随想 さびの話 第62話より、
「昭和39年9月6日の読売新聞の朝刊に、写真家の土門拳氏京都の東寺観智院客殿の簀子縁(すのこえん)の和釘のことが書かれている。・・・・・・・
・・・中略・・・300年の風雪に、簀子縁のヒノキの縁板もやせて、クギの頭が出ているが、その上を歩いても不思議と足が痛くない。これ一本一本、手つくりの和クギのよさであり、情があると、土門氏は言われる。そのクギのあたまを見ると、一本一本、さび止めの漆が塗ってある。・・・中略・・・・・加熱して出した酸化物の黒いさび色を漆で止めてあるので、さび止めという方がよいかもしれないが、これこそが、古くからの日本おける漆塗りによる鉄の防錆技術なのである。
炭火にかざして、黒色酸化物層をつくらせて赤さびを防ぐ、いわゆる焼き止めをしてから、漆を塗る。鉄びん、茶釜、燈籠、甲冑、の鉄の防錆はこうして行われた。・・・・」
※太字の内容が、焼付塗装の由来だそうです。2020.08.10追記
前のブログで「塗料の乾燥」でも触れましたが、東寺観智院客殿のヒノキの縁板に打ち込まれた和クギに漆が塗られ、300年以上経ってももっているのが凄いと思います。
現在は、錆びない金属ステンレスがありますが、これからも、金属製品には防錆が必要なこととして変わらないことでしょう。
参考資料「金属の化成処理」間宮富士夫著 出版 理工出版社
   「表面技術便覧」(社)表面処理技術協会 編 発行社 日刊工業新聞社
   「随想 さびの話」山本洋一 著 出版 理工出版社

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