塗料の付着

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当社は、ホームページでもご紹介している通り、「下地処理技術・下地処理の工程を重視します」と謳っていますが塗膜の付着性、密着性が塗膜性能に大いに関係しているからです。
付着性が大事なのは、塗装後の塗膜性能に密接な関連があり、塗料の性能を支える基になります。
お化粧に例え、説明することがあります。よい肌に、よいファンデ-ションが乗り、上化粧がよく仕上がるという理屈と同じと。
下地処理技術(洗浄、表面調整、化成処理)の大切さを知ったきっかけが有ります。
この仕事について、5、6年たった昭和54年頃、いろいろな塗装トラブルを経験し、それを解決するために塗装技術の専門知識が必要と感じていた頃、日刊工業新聞の広告で「塗装・塗膜クレーム集 発生原因 その対策総合技術資料」という専門書を知りました。確か400部限定で価格が¥80.000円、当時の塗装、塗料に関する専門家達が執筆している事と、紹介されている内容を読んで役に立つと判断し購入を決めました。
当時はまだ、洗浄作業は創業時のままのやり方で作業していたのですが、この本を読んですぐに改善しなければならないと理解しました。通常「前処理」と言われる工程でした。塗装の前の工程なので前処理と呼んでいたのでしょう。
その頃、創業当時からしていた双眼鏡塗装の仕事をもありました。
アルミダイカストで作られた製品で、洗浄の際、オルソを湯で溶かした槽に入れて洗っていました。当然、液はアルカリ性になります。アルミとアルカリが過剰反応するとスマットと言われる粉が表面につきます。スマットと言う言葉を知ったのはその本からでした。度々その現象が出てスマットを取るためバフをかける作業が必要となります。これでは手間がかかり効率的ではありません。
その本に書かれている「アルミニューム用塗装下地処理」の章を読み、スマットを出さない方法はあるのか調べてみました。
その記述を引用して説明します。
「アルミニュームはそのままで良好な耐食性を示すのは、アルミニューム表面が空気中で酸化され、酸化膜を形成しているからである。この酸化膜は、自然発生したものであるから、均一性に乏しく、安定した耐食性に欠け、塗料との密着性も良くない。」
アルミニューム用脱脂剤として
① ノンエッチングタイプ
② マイルドエッチングタイプ
③ エッチングタイプ
の3通りあり用途によっては、表面がエッチングされては支障がでる物もあり、目的に応じて使い分ける必要があることが判りました。
スマット対策として、塗料ディーラーを通じて薬品メーカーを紹介してもらい、マイルドエッチングタイプの洗浄剤を採用しました。主な成分は、メタケイ酸ソーダ、リン酸塩、炭酸塩、キレート剤、界面活性剤です。
結果的にはアルミに対しては、オルソは反応が強く向いていなかったのです。
それを慣習的に使用して、吟味しなかったため起きていた過ちでした。
しかし、この経験が下地処理技術に関して理解を深めるとともに大切さを教えてくれる結果となりました。
また、金属塗装技術を体系だって知識を得なければいけないと思う方向に向かわせたのです。後に、川越本社工場を作るときにこの経験が生きました。
「金属清浄技術」(間宮富士夫著)という文献もその頃に知り勉強しました。目的に応じて様々な清浄技術があることを知りました。
JISにおける清浄方法の種類を参考のため列記します。
① 石油系溶剤清浄方法
② 石油系以外の溶剤清浄方法
③ 汗および指紋除去方法
④ 蒸気脱脂方法
⑤ アルカリ清浄方法
⑥ 乳剤清浄方法
⑦ 電解清浄方法
⑧ 蒸気清浄方法
⑨ 超音波清浄方法
⑩ ブラストによる清浄方法
⑪ 液体ホーニングによる清浄方法
⑫ 酸除錆方法
⑬ アルカリ除錆方法
⑭ 電解除錆方法
当然ながら、経験的に清浄度が高ければ高いほど、付着性は良くなることを理解していましたが、「塗膜は何故くっつく」と付着に関して知りたくなり、理工出版「塗膜の付着・そのメカニズムの理論と解説」(佐藤弘三著)と言う本を見つけました。
「塗膜は何故くっつく」結論から言えば、まだ解明されていないようです。
ただし、いろいろな諸説があるので紹介します。
序言に付着に関してこう述べています。
「塗膜の付着性の良否は塗料の商品価値を左右する大切な性質である。付着は物体の界面で起こる現象であり、その中には液化、流動、拡散、濡れ、付着、固化、変形、破壊という多くの素過程が含まれている。したがって、付着に関係ある分野は高分子化学、界面化学、材料力学、レオロジーなどのほかに、固体表面に関する情報も必要であるなど多岐にわたり、付着は境界領域の科学技術である。」
付着の理論の章に説が紹介してあります。
詳細な説明は省きますが、
① 投錨説
② 界面化学理論
③ SP理論
④ 拡散理論
⑤ 静電気理論
⑥ レオロジー理論
⑦ WBL(weak boundariy layer)理論
などが上げられていました。
著者はどの説が付着に関して解明しているかは断定していません。
他の記述でこう述べています。
「強い付着を得るためには、界面張力または混合のエンタルピーが、極小のゼロになるだけでなく、負の結合力(強い相互作用)のある系を求めることができれば、そのときには付着強さは、極めて大きいものが得られるはずである。実際には、付着は複雑な素過程を有しており、そのためにはぬれの問題、レオロジー的因子やWBL生成、内部応力の発生など多くの要因についても、考慮しなければならない事は言うまでもない。」
私にとって難解な面もあるのですが、諸説が絡み合って付着が生成されると理解しました。
塗装技術に関しても関心を持つようになり、塗装に関するセミナーが有ることも知り、数回セミナーに参加したこともあります。
「コーティング工学」と称して行われ、講師が原崎勇次氏でした。教材には講師が書かれた「コーティング工学」が使われていました。
記述は学術的で難解な面があり学生時代の不勉強を後悔しましたが、それなりに受けてよかった面もありました。塗装の仕事にかかわる技術者も来ており、その方々の質問が参考になりました。例えば光学関連の方は、ディッピングでレンズのコーティングが可能かなど、その質問には新鮮さを感じたものです。
当社の場合、当時塗装方法はエアースプレーを採用していましたが、このセミナーでは様々なコーティング方法を紹介していました。
当時、私には耳慣れない言葉でしたが、例えば、ロールコーター、カーテンフローコーターなど、ぬれ性が塗工剤(塗料と言わずこの表現を使っていました)に重視される方法なども知りました。製品形状により効率的で様々な塗装方法がとられていることも。
この講師が付着に関して、説明をしてくれた言葉が印象的でした。
付着の構造を解明したらノーベル賞ものだ、しかし、解明してもメリットがないために取り組まれていないと。
なるほど、そんなものかと納得した経験があります。
塗装の仕事に従事して36年がたちましたが、自動塗装機の開発、改良などにかかわりながら、品質向上に取り組んでいました。
先ずは、付着性を良くすることが塗膜の品質保証に繋がると現場的体験から学び、下地処理で一番大切に思ってこだわっているのが、微細にエッチングさせる技術です。様々なダイカスト製品は鋳造メーカーにより汚染状況が違ってきます。それに対応できる前処理ラインを構築することも当社の技術目標なりました。いろいろなダイカスト製品を扱い、その度いろいろなトラブルを克服することでノウハウが蓄積されていきました。現在は前処理ラインでは亜鉛ダイカスト、アルミダイカスト、Mgダイカスト、アルミ押し出し材などに対応が可能になりました。
塗膜の付着性を高めるには、エッチングで単位あたりの表面積を増やし接触面を大きくすること、清浄度を上げ適切な化成皮膜をのせて浸透してくる物資に汚染されないようにすることが下地処理技術の基本となりました。
当社の化成皮膜はノンクロームタイプを採用しています。※お知らせで紹介しているように、アルミ板に塗装し3価クロメート皮膜より1000時間連続塩水噴霧試験では良いことを立証しています。これなども付着性の違いによるものと理解しています。
ただし、塗膜と複合して性能は発揮されますが化成皮膜単体では劣ります。
付着理論は解明されていませんが、経験と工夫で付着性を向上することが出来ました。

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